なぜネットワークの広域化が必要なのか

前回は、過去と現在という2つの視点から、電力システム改革について論じた。今回は「未来」という3つめの視点から、同じテーマを議論してみたい。

 日本のエネルギーの将来は、再生可能エネルギーを抜きにして考えることはできない。風力、太陽光、地熱などの発電能力を高めていくことは、温暖化ガス発生を抑えて地球気候変動に対応するうえで重要なのはもちろん、日本のエネルギー安全保障を確保するうえでも非常に有効である。

 再生可能エネルギーは、まだ技術面が発展途上段階にあり、原子力や火力などに比べてコストが割高である。したがって、現時点で大規模に導入することは難しい。ただ、その普及が進んでいけば、技術革新などによってコストが大幅に下がっていくことも期待できる。

 再生可能エネルギーへの依存度が高くなると、電力の安定供給が大きな課題になる。太陽光は日照や天候に大きく左右される。風力は風が吹くかどうかによって発電量が大きく変動する。

 こうした供給の不安定性への対応策はいろいろ考えられる。たとえば、太陽光や風力発電にはそれとセットで蓄電池を準備するという方法がある。蓄電池に電力を貯めておけば安定供給を実現できるだろう。現時点では蓄電池のコストが高いので、この方法をいますぐ大々的に実行するわけにはいかないが、今後のコスト低下次第では大いに期待できる。

 電力システム改革との関係で言えば、ネットワークの広域活用が重要な意味を持つ。気候の変化は地域を限定すれば大きな不確実要因であるが、全国というような、より広域で考えれば、地域ごとの変化を相殺することがある程度期待できるからだ。

 たとえば、東北地方の天気が悪くて太陽光の発電能力が落ちていても、北海道の風が強くて風力発電の能力が上がっているかもしれない。あるいは中国地方の風が凪いで風力発電の能力が落ちていても、四国が好天で太陽光発電がフル稼働していることも考えられる。

 このように、再生可能エネルギーが抱える不確実性を軽減するためには、できるだけ広域で電力ネットワークを運営するのが基本である。これは海外の専門家の多くも指摘するところだ。